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会陰ヘルニアという病気(前編)

 

このレントゲン写真 ↓ ごらんください。

 

 

獣医師なら、もちろんわかりますが
飼い主様でも、なんとなく異常がおわかりになるでしょうか?

 


このワンちゃんは、お腹の中のある腸管、膀胱、前立腺、そのほか腸間膜組織や脂肪などあらゆるものが、おしりの横へと飛び出しておりました。この病気は、

 

 

 

会陰ヘルニアのグレードIVです。

(重症度判定にI〜IVまであり、IVが最も重度)

 


簡単にいうと♂ホルモンの影響で、おしり周り(直腸周囲)にある筋肉の集まり(骨盤隔膜)がなくなるため、お腹の中にある臓器や組織が、おしり周りに飛び出してしまいます。(左側あるいは右側もしくは両側から逸脱) また直腸の支えもなくなるため、直腸の壁がしだいに伸びていき排便がうまくできなくなる病気です。

 

症状は一番多い訴えから挙げると、排便時の”しぶり”です。具体的にはウンチをする時間がかかったり、うめき声をあげるなどですね。重症化すると自力で排便できなくなります。さらに膀胱までとびだすと、排尿困難になり命に関わってきます。

 

治療法は、外科的手術でないと治りません。
術式は、私の知っている限り10通り以上あるかと思います。

 

ーなぜ、そんなに術式が多いのか?
ベストな術式が確立されておらず
ほかの手術にくらべ再発や合併症がとても多いためです。

 

 

ーなぜ再発や合併症が多いのか?
以下の二点が難しいためと考えております。
「ない壁(骨盤隔膜)をつくりあげる」
「のびきった直腸を元に戻す」

 


とくに性格上よく吠える子は、単純に筋肉同士を縫合すると腹圧に耐えられない場合があり再度とびだすリスクがあります。また片方だけ塞いでも術後の腹圧により反対側も飛び出してしまうことも。なんとか、ない壁をつくりあげた(骨盤隔膜を再建した)としても、だらりと伸びきった直腸は、自然に修復することが難しいのではないかと考えています。

 

すみません思ったより長くなりそうなんで二回に分けて投稿します。
簡潔にまとめる技術は難しいですね。

 


次回は、当院で取り組んでいる術式をご紹介したいと思います。