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会陰ヘルニアという病気(後編)

 

前回の内容の続きを詳しく説明してほしい!という獣医の先生からの要望もあり、やや専門用語を使ってるとこもあります。どうぞご了承ください。

 

会陰ヘルニアにおける当院の外科的治療をご紹介します。
まず前回の難しい点を、どのように解決していくか

 

 

「ない壁(骨盤隔膜)をつくりあげる」

 

本来あった壁を頑丈に修復するには?

 

ほかの部位から、筋肉を引っ張ってくる方法もありますが、筋肉への虚血や痩せている子(少ない筋肉量)では難しい場合があります。そこで縫合糸にも使われているポリプロピレンメッシュ(以下、PPメッシュ)という材料を用い、筋肉の代わりになるよう設置します。しかし、ただ筋肉にPPメッシュを縫い付けただけでは、土台となる筋肉が頼りない(地盤がゆるい)ため、腹圧に耐えられないことも。理想的なのは骨盤隔膜があった位置に代わりとなるものを強固に設置することが重要ではないかと考えます。

 

会陰ヘルニアPPメッシュ修復術
ポリプロピレンメッシュ(以下、PPメッシュ)を特殊な器具を用いて、おしりの骨にある穴(骨盤の閉鎖孔)に通します。尾の根元にある骨の靭帯(第一第二尾椎横突間靭帯)へPPメッシュの両側断端を結びつけます。

 

 

 

 

 

この方法が優れている点は、解剖学的に骨盤隔膜と似た配置になるだけでなく、たるんだ直腸を支え直す点にあります。当初はこの術式だけを行っていました。おかげでヘルニア再発例はゼロだったんです。しかし、しぶりが解消されない、つまり直腸のたるみを完全に修復できず自力排便が難しいケースがでてきたのです...そのため当院で考案した以下の方法をプラスしました。

 


「のびきった直腸を元に戻す」

 

のびて膨らんだ直腸をどうすれば?

 


直腸縫縮術
肛門から指をいれ、最もうすく伸びている箇所を手術ペン(ピオクタニン)でマーキングします。その部分が円から点になるよう直腸近位から肛門括約筋にかけマットレス縫合を行います。数年前に学会発表した時は単純結紮で縫縮していたのですが、1例のみ肛門直下の直腸にゆるみが再発し、たまにしぶりの症状がでる例がありました。そのため肛門括約筋を少しだけひろうマットレス縫合に変えたところ、肛門直下のゆるみを修復でき、結果として手術時間の短縮にもつながりました。

 

 

 

 

 

「PPメッシュは人工材料だから異物反応がでるんじゃないの?」


ー 獣医師にも聞かれるんですが、当院での異物反応は0%です。ただ海外文献では5.6%だったという報告があるため、非吸収糸(プロリーンなど)にすら異物反応を示す子には、難しいかもしれません。

 

 

余談ですが、お腹から肛門側の腸管をひっぱり固定する方法もあります(結腸固定術)しかし、この方法は基本的に直腸脱の予防に施すためであり、肛門周囲ののびきった直腸に対しては効果ないと思うんですね。またこれだけの手術で治せるということも聞いたことあるんですが、壁がつくられず直腸を支えることができないため、便がたまったり?“しぶり”が残ってしまうのでは?...ただ賛否両論あるんで...これ以上は...控えさせていただきます。

 

 

 現在まで会陰ヘルニアppメッシュ修復術+直腸縫縮術26例の治癒率は96%(25例/26例中)です。先ほど述べた軽度の合併症があった1例は、現在の縫縮法であればカバーできるかと考えています。問題あれば今後術式も変更するかもしれませんが、この方法が現時点でのベストです。

 

 

 

会陰ヘルニアグレード4の術後です。X線読影に鋭い方なら気づかれたと思うんですが、この子は先天的に恥骨欠損してました。しかし難なくPPメッシュも固定でき幸い術後経過も良好です。

 

 

 

熱が入りえらく長々となってしまいました。 

 

 

 まあ 単純に

 

 

 「先生、良くなったよ」

 

 

 この言葉を聞きたいだけなんですけどね